「ロス兄っ!!」
私の少し先を歩くロス兄に追いつこうと
私は必死に走った。
「ねぇ……っロス兄!!待って!!」
私とロス兄の距離が縮まる事はなくて
ロス兄は、いつもと同じ笑顔でいてくれてるけど
何も言ってくれなくて……
ゆっくり、ゆっくりとその距離は広がって行った……。
幼い頃から。
「………っロス兄っ…!!!」
がばっ
「……っはぁはぁ……」
何もない空間に手を伸ばしたまま、呼吸を正す。
「……………」
そして、ゆっくりと今の状況を把握する。
「……………夢…?」
状況を確認して、自分が起きたばかりだという事がわかった。
夢、さっき、ロス兄が私から離れていく夢を見た。
………夢で良かった……。
本当にそう思った。
幼い頃から、私はロス兄の事が好きで、それはもう
リアとロス兄の取り合いをしたくらいに。
その気持ちは今も消える事はなく、むしろ大きくなっている。
だけど、ロス兄はいつまでも私の事を子供扱いする。
その度に私は心が締め付けられるような痛みを感じる。
「もう、立派に大人なのに……。」
「おはよー!!リア♪」
朝の散歩がてら、リアの守る獅子宮に寄ってみた。
嫌な夢を見て、少しでも気持ちを晴らしたかったから。
「ぁあ、おはよう。今日は珍しく早いな。」
リアは笑いながら
私の頭をわしわし撫でた。
「やめてよリア!!ロス兄みたいな事しないでよ!!それに私はいつも早起きですー。」
パッとリアの手から逃げて
乱れた髪を手ぐしで直す。
「ははっ!!悪かったよ。」
「もー……リアもロス兄もなんで子供扱いするかなー…。」
むぅ、とあからさまに嫌な顔をしてみた。
すると、
がしっ
わしわしわし……
「はははっ!!俺がどうかしたのか!?」
「ロ、ロス兄っ………!?」
私の頭を鷲掴みにして
髪をぐしゃぐしゃにするロス兄がいた。
「な、なんでロス兄がこんな朝早くにリアの宮にいるの?!」
びっくりして
リアに説明を催促した。
「ああ、昨日この獅子宮で飲み会があって、兄さんはそのまま俺の宮で寝てしまったんだ。」
「飲み会っ!?」
「リアッ!!」
「あ……」
私が驚愕の声をあげるのと
ほぼ同時に
ロス兄がリアの口をふさいだ。
リアはリアでしまったというような顔をしていた。
でも、すべてを語った後だったからそんな事をしても
無駄だ。
「へー、飲み会あったんだー。昨日ロス兄、残業あるからって………私との約束、ドタキャンしたくせに……」
言ってる間に悲しくなって、俯いてしまう。
昨日、私はロス兄と一緒にご飯を作って一緒に食べる約束をしていた。
仕事なら仕方ないな、と諦められたけど、ロス兄は嘘をついて、リア達と一緒に飲んでたんだ……。
「嫌なら、嫌って言えばいいじゃん!!ロス兄の馬鹿っ!!………っ!!」
私は自分の部屋へ猛ダッシュした。
リアとロス兄を残して。
「おい……っ!!」
ロス兄やリアが後ろで何か言っていても、私は声が聞こえなくなるまで走った。
「ロス兄の…馬鹿…っ…。」
家に着いて、すぐに私は
ベッドにダイブした。
「……嘘つくほど、私の事が嫌だったのかな…?」
もしそうだとしたなら
私の今までの行動はすべて
ロス兄の迷惑になっていたという事だ。
「………………迷惑…」
なんだか
すごく怖くなってきた。
ロス兄にとって私は迷惑…。
ロス兄の目に私は映ってすらいないかもしれない。
そう思うといつもみたいにロス兄に話しかける事ができなくなってしまう。
「ロス兄……っ…」
私はどうすればいいのだろう……。
迷惑なのかもしれないけど、私はロス兄を好きな事を
諦める事はできない……。
なら……
せめて………。
「おはよう!!昨日はすまなかったなー…少しリアに相談したい事があってな…」
「いいよ、もう。それじゃ、私今から巡回だから。」
私はロス兄の顔も見ないで
早足で聖域を降りて行った。
「…………?」
それから
私は遠くからロス兄を発見すれば
会わないように遠回りしたり
話しかけられても
最低限の会話しかしなくなった。
何より自分から話しかける事をしなくなった。
辛いけど……
すごく、すごく辛いけど
こうすれば、ロス兄に迷惑をかけないですむ……。
これが…
「ロス兄のためだもんね………」
「何がだ?」
「…っ……!?」
ハッと振り替えると
誰もいないと思っていた場所に、
今、会いたくない、会ってはいけない人がいた。
「………っロス兄…っ…」
やばい…っ!!
そう思って反射的に
ロス兄とは逆方向に走ろうとした。
「待て。」
ロス兄が声を発するのと
同時に片方の腕を掴まれた。
「…な…何っ…!?」
ロス兄の予想していなかった行動にビックリして
どもって言葉を返してしまった。
「……………最近、妙にさけるじゃないか。」
「そんな事……」
「ない、と言えるか?」
ぐっ……
と、言おうとした言葉を飲み込んだ。
「………そうだとしても…」
「ん?」
「そうだとしても、
………そうだとしてもロス兄には関係ないっ!!」
バンッ!!
「………そろそろ怒るぞ。」
一瞬のことで、
気付いた時にはロス兄と壁の間に収まっていた。
「……………………。」
「本気を出せば、いつでも掴まえられるんだぞ?」
「…………っ」
「なんで今までそうしなかったか、わかるか?」
「……わかんなっ…ふぅ…」
俯いて、わからないと答えようとした。
しかしそれは
出来なかった。
何かが、私の唇を覆った。
それがなんなのか、気付いたのはゆっくりと唇から何かが離れた時。
「……っ…ロス兄っ…!?」
ロス兄の唇だった。
私はロス兄にキスをされていたのだ。
「……なんでっ…んっ…」
わからない……
何もわからない…
なんでロス兄は私にキスをするのだろう…
こんな状態で
ほんのわずかでも期待をしてしまっている自分は馬鹿なのだろうか…。
「………はなんでだと思う?」
唇を離して
ロス兄はゆっくりと私に問い掛けた。
「え………」
激しいキスの後で
私の意識はぼんやりと、もやがかかったみたいで
ロス兄の言っている事がわからなかった。
「なんで、今俺がにキスしたんだと思う?」
ロス兄は私にわかるように
さっきよりゆっくりと言った。
質問の意味と、さっきの出来事を思いだして
顔が熱くなった。
「……な、なんでって言われてもわからないょ…」
「いや、本当はわかっているだろ?」
ロス兄はいつものさわやかな笑顔じゃなく、ニヤッと怪しく笑った。
「……っだから…わからないって…っ…!!」
両手を突っぱねて
ロス兄を少し後ろに行かせる事ができた。
「ロス兄は…っ…いつもいつもなんでも知ってるみたぃにして!!
私は馬鹿みたいで……
…っずるいよ…!!
ずるい……っ…」
今までため込んでいたものが涙と一緒にあふれた。
「ロス兄ばっかり余裕があって…っ!!私はいっぱいいっぱいで…っ…今だって…
私はロス兄のおもちゃじゃないっ!!……迷惑なら…私の事なんてほっといてよっ……!?」
「迷惑なんて……誰が言った?」
「ロ、ロス兄……?」
またもロス兄の胸に閉じ込められた――……
「俺が、を迷惑だと思った事なんて一度もない…っ
なぜお前がそんな事を考えたのか知らないが、俺は…
お前がいなきゃ、駄目なんだ…。」
「ロス…兄…?」
一体、何を…?
ロス兄は、何を言ってる…の…?
「だから、にさけられて、心底辛かったんだ。」
「だって…ロス兄は、私との約束、嘘吐いてまで守ってくれなかった…っ…だから!!私の事迷惑なんじゃ……」
「あれは……っ」
ロス兄は顔を赤くして突然慌て出した。
「…………………?」
「……そろそろ、危なかったんだ……」
「え………」
「と二人っきりになって、自分を抑える自信がなかった。だからリアをつかまえて色々と相談していたんだ。
……すまなかった。お前を悲しませる事になってしまったな…。」
「そ、そんな素振り全然…」
「あのなー、一体俺をいくつだと思ってるんだ?
自分の感情くらい容易に隠せる。」
……確かに、ロス兄の困った顔とかは見たことがない…。
「で?」
「え?」
一人納得していたら
突然何かを問われた。
首をかしげて考えていると、ロス兄は
さっきの怪しい笑みになり
「決まってるだろう。の気持ちだ。」
ボッ………
瞬時に私の顔は真っ赤に染まった。
「なっ……!!」
「俺ばかりじゃ、すっきりしないからなー。」
そう言うロス兄の顔はニコニコしていた。
「ロ、ロス兄わかってるでしょ!!」
「なんの事だ?」
「…………っ〜…!!」
「ん?」
だから、ロス兄のその笑顔には弱いんだってば……っ
「……小さい時からずっと……ロス兄が大好きだよ……っ!!」
ここに 後のバカップルが誕生したのだった。
end
+++++++++++++++++
ぅわー……
ロス兄全然ちがーう。
妄想って怖ーい。(笑)
パソコンやっと直った……!!(感涙)
わぁーぃわぁーぃ~ヽ('∀`)ノ~