「うっそだぁー!!」
そんな間抜けな台詞が
私があの人に向けて放った初めての言葉だった。
年寄り?若者?
私の前にはアテナと、
アテナに『教皇』と紹介された
青年がいた。
「どうかしましたか?さん。」
アテナは私の叫びに少々困惑しながら
聞いてきた。
「す、すみません・・・しかし、その若者が教皇というのは信じられません。」
私の言葉に教皇と紹介された青年が
ピクッと動いた。
「まあ、なぜですの?」
「お言葉ですが、こんな、私と大して年の変わらない若者が教皇なわけないです!!
教皇と言ったら、200歳は軽く超えているご老体とお聞きしました。」
「・・・確かに、261歳ですが・・・」
ここで私は、今日の日付を思い出した。
「あ、そうか。今日は4月1日でしたね。
アテナ、騙そうったってそうはいきませんからね。」
「・・・・いえ、そのですね、・・・今日はエイプリルフールでしたか・・・。」
「ははっ・・・ところで
本物
の教皇はどこに?」
アテナが乾いた笑いを漏らしたときだった。
「ええーーーいっ!!!!なんと無礼な者かっ!!私が教皇だと先ほどから申してるだろうにっ!!」
「っな・・・!!」
さっきから黙っていた
偽・教皇
が騒ぎ出した。
「嘘付けっ!!今私はアテナと本物の教皇に会わせてもらうところなんだっ!!」
「そんなものがこの聖域にいるか!!私が教皇なのだからっ!!」
「だから、教皇は261歳のご老体だと言ってるだろっ!!お前のような若者じゃないっ!!」
「私は261歳だっ!!」
「・・・・・はぁっ!?」
はあ、はあ、と荒い呼吸が響く。
今、この人はなんと言った?
261歳?
いやいや、どうみたって18〜20くらいの人ですから。
「アテナ、この人
病院に連れていった方が良いのでは?
私、名医を知ってますから紹介しますよ。」
あはは・・・、とアテナは困ったように笑った。
ふと、青年を見ると
怒っているのか、拳をわなわなと震わせていた。
「おのれ・・・貴様、余を侮辱するか・・・っ!!!?」
「侮辱っていうか、アテナに助言を・・・」
「・・・っもう許せんっ!!くらえっ、
スターダスト・レボ・・・・
「ちょっと待ったぁーーっ!!」
どこからもなく突然現れた
天秤座の黄金聖闘士の童虎さまに
青年は取り押さえられた。
「なんだ童虎っ!?離せっ!!この小娘に一撃入れるまで私はここを動かぬっ!!」
「落ち着くのだ、シオンよ。
お前の技を一撃でも食らったら普通のものは死んでしまうわ、馬鹿者!!」
「しかしっ・・・!!」
「しかしもくそもあるものかっ!!たわけがっ!!」
童虎さまのあまりの迫力に押し黙った若者は
その場で手を下ろし、
悔しそうに顔をゆがめた。
「まったく、やはり病院に行ったほうが・・・。」
「貴様・・・まだ言うか・・・っ!?」
「のう、よ。」
そこで
童虎さまが私と若者の間に割って入った。
「なんでしょう?童虎さま。」
「なぜ童虎には敬語なのに私には敬語を使わな・・・」
「そやつはそんななりをしておるが、本当に261歳で、教皇なんじゃ。」
「・・・・・・え?」
アテナを見ると、
なぜだか申し訳なさそうに笑い、
童虎さまを見ると
少し困ったように笑い、
若者もとい教皇さまを見ると、
ふふん♪と勝ち誇ったように笑っていた。
「わかったか?小娘。貴様が慕い、面会を希望している相手は
この私なのだ。」
「・・・・・・そんな、馬鹿なことが・・・っ!?」
しかし、外見はどう見ても261歳には見えない。
「外見からしてそうじゃない・・・」
「それは童虎も同じであろう。」
「童虎さまの事情はちゃんと承知しております。しかし・・・」
「わしは、一度死んだみでな?生き返ったときに若返ったのだ。」
「・・・・・なぜ・・。」
「この姿のときが一番小宇宙が満ち溢れておるからな。」
「・・・・・・じゃあ、本当に・・・」
アテナも童虎さまも
うん、と頷くだけだった。
・・・・・・・・ひゅう〜・・・
4人の間に
風が吹いた。
「・・・・すみませんでしたっ!!本当に教皇さまだなんて夢にも思わなかっただけなんですっ!!」
「ふんっ、今さら遅いわ!!」
既にご立腹の教皇は
私を許してやろう、
という気持ちは持ち合わせていないようだった。
「シオン?さんも知らなかっただけなのですから、許してあげてください。」
「その辺で勘弁してやれ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「シオン・・・」
「のう・・・」
アテナと童虎様の優しいお言葉に
教皇は小さく息を吐き
笑った。
「私も大人気がなかったというものだ。」
そう一言言うと
私の方を振り返った。
「今回は見逃してやろう。」
そして、
私の前で
初めて笑ってくれた。
アテナでも
童虎様にでもなく
私自身に笑いかけてくれた。
その笑顔に
私が一発でノックアウトされてしまった
というのはまた別の話。
end
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シオン様のお話を考えますと、
ギャグしか浮かばない私は一体・・・。
最後のほうがなんか悪あがきっぽい・・。